全国高校生デザイン選手権大会のお話

デザインをはじめるきっかけになったとも言える「全国高校生デザイン選手権大会」。

毎年夏休みは、大会出場を目標に多くの時間を費やしていたことを今でも鮮明に覚えています。


この「デザセン」はデザインや美術などを学ぶ学生を中心に毎年多くの高校生が挑戦します。東北芸術工科大学が主催するこの大会のテーマは、『明日の社会を見つめ、明日の世界を創造する』。高校生が高校生の目線で、社会にある問題点を発見し、その解決策を提案していく大会です。


3人1組で応募出来るこの大会は、一次審査にA2サイズのパネル4枚を提出します。8月末に締め切り、選ばれた12組が10月下旬に東北芸術工科大学にて開催される決勝大会へ出場することができます。模造紙を使って美術部を中心とした有志メンバーでブレインストーミングを行ない、できるだけたくさんのアイデアを出す。それをカタチにしていきながら、チームメンバーを構成していく(メンバーが違えば何案でも提案が可能)。初めて使用するイラストレーターに戸惑いながら、提案をまとめます。※現在は提出課題が変わっています

もともと天の学校は決勝大会の常連校であったことや、担当してくださった美術部顧問の先生がコンペに強い先生ということもあり、問題の見つけ方、それをどう解決し、どのように伝えるのが効果的なのか、先生にご指導を頂きながら、アイデア出しや試作の制作は夏休みをほぼ全部使い、夏休みの終わり、締め切りギリギリまでパネル制作を行います。


その年提出した落選案で記憶に残るのは、オリンピックの聖火ランナーの持つトーチを砂時計のモチーフにする提案。その国や人種、それぞれの時間に対する価値観の違います。それを可視化したモチーフを使用したトーチを聖火ランナーが繋いでいくことで、世界を繋ぐというような提案でした。


たくさんの提案の中から、決勝大会へ出場することになったのは、兵器のトレーサビリティについての提案です。


ひとつ上の先輩2人との3人構成で、発表されてからどういう表現にするのか考え、3人と先生で公開プレゼンテーションへ向けた準備を始めます。決勝大会は7分間のプレゼン。方法はパワポや動画、大道具や小道具を駆使して自分たちの提案を審査員の先生へ伝えます。曲を入れた動画を制作し、フルに7分間を使い切ることが出来るよう構成。iMovieを使って動画を作り、大道具と小道具を駆使しながら、シナリオはもちろん丸暗記。思い返せばお芝居しているような構成でした。高校生が取り組むには重すぎる様な問題に目をつけ、真正面から向き合っていたのだと、振り返るとそう思います。ぜひ、その7分を、動画でご覧ください。

私達の提案は多くの方の心を動かし、優勝という、文部科学大臣賞を受賞させていただくことが出来ました。こういうことをしたい!という提案ではなく、無理かもしれないけれど、知ることで、イメージすることで世界は少し変えられるかもしれないという事をゴールにしたことが、評価されたことをよく覚えています。


この受賞をきっかけに、第2回 世界アーティストサミットでのオープニングプレゼンテーションや、高校の文化祭、兵庫県ユニセフ協会主催のイベントなど、たくさんの場所でプレゼンをさせていただく機会がありました。また、多くのメディア様にも取り上げていただいたことで、インタビューを受け、その場で自分の意見を述べる機会がたくさんありました。インタビューのトレーニングとして、作業中に先生に質問されないと、「自分の思いは簡潔にまとめろ!」として作業中に先生に質問され、答えられないと、自分の思いは完結にまとめろ!と言われ、ひーひー言っていました。一つの受賞から、ステージに上がり注目を浴びる中で自分の意見を発言すること、質問に対して的確な返答をその場で行うという実践を交えた、経験を積むことができました。


翌年は入選止まり、前年度一緒に出場した先輩たちが3年生で、ふたりとも最後の出場の中、天の入っていないチームが決勝大会に選ばれるという本当に悔しい思いをしたことを今でも覚えています。全力でサポートに回っておりましたが 笑

そして翌年は決勝大会に出場するも、入賞。後輩を連れての挑戦だったものの結果を残してあげられなかったこと、7分間に提案を詰め込みすぎたこと…。この時の悔しさも覚えています。


コンペや大会に挑戦すると、悔しいことや涙することがたくさんあります。しかし、作品が完成した時の達成感や自分の考えが認められた時の嬉しさが忘れられず、今でも挑戦しています。また、与えられたテーマに対して考えることは、その問題を深く知るきっかけにもなります。制作を進める中で、自分以外の意見を聞き、こんな考え方もあるのかと気付かされることもたくさんあります。これまでの数々の経験の中で、結果がどうあっても、コンペに取り組むということそのものに意味があるのだと感じます。


天の人生を大きく変えた、と言うと大げさかもしれないけど、本当に天の中ではそのくらい大きなこの大会。

もうあれから10年が経ちます。

今でも天はデザインの世界にいるし、これからもデザインの世界で生きていきます。

一緒に取り組んでくれた先輩や、支えてくれた家族、友人には感謝の気持ちでいっぱいです。


そしてこんな世界を教えてくれた先生へは、心から感謝しています。


動画が見れない方へシナリオのセリフを抜粋してまとめました⇓


食の安全に対する関心の高まりから、食品には誰がどこの工場で作っているのか、生産者の名前までわかる時代。

これをヒントに、戦争で使用される兵器にも、食品のように情報を表示するということを提案します。


製造国、企業名、その兵器の値段の表示、さらにその代金で水などの人が生きていく上で必要なものが、どれくらい購入出来るのかを記載したシールを貼り付けます。兵士がふと手にした武器を見た時にこの表示を見た時に何を思うのか。あなたが戦い手に入れようとしているものはこの武器を仲介しないと手に入らないものなのかを多くの人々に問いかけることでしょう。製造されている企業名が明らかになった時、人はどのような感情をいただくのでしょうか。


その年日本ではマンホールが盗まれ、鉄くずとしてリサイクルされ他の国へ持ち出されたようです。そこで私達は兵器産業の新しいビシネスの形を提案します。

「戦争が起これば儲かる」という仕組みを「戦争がなくなれば儲かる」という仕組みに変えるのです。

兵器や武器を回収し、農具や橋の素材として使用していく「兵器のリサイクル」を行ないます。そしてリサイクルされ、生まれ変わった道具には、どこの戦争で使用した兵器が使われているのかの表示が誇らしげに刻まれます。


こんな取り決めなんて守る国も企業もないでしょう。

でも一人ひとりがイメージすることで世界は少し変わるかもしれません。

ものを創るという行為が武器や戦争を仲介しないでその人達が本当に求めているものに直接繋がることを願っています。

デザセンの2007年入賞提案では応募作品のパネルの情報も公開されています!なんか、若いです 笑


今も続くこの大会。毎年決勝大会でのプレゼンの様子は生配信も、公開もされています。現役の高校生が何を見て、何を考え、何を思うのかを知るきっかけになるので、今でも時々作品をチェックしています。大会自体は応募方法にも変更があったようです。高校生なら挑戦するべきこの大会。是非、お近くの学生さんへお知らせしてあげてください◎

詳しくは「デザセン」で検索!


Photo:Instagram/@qianhua.portrait

多才すぎる被写体

The story of mine from the past, from now on

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